F-14 TOMCAT について

(著作権とか大丈夫かな・・・汗)


●開発秘話

1959年当時 MIG-25 などの旧ソ連の航空技術に脅威を感じていた米国は、当時の主力戦闘機 F-4 ファントムU でこれらの戦闘機に対抗するには作戦上困難な為、次期主力戦闘機を欲していました。それ以前に、旧ソ連製の爆撃機や潜水艦に搭載された対艦ミサイルが遠方からでも米艦隊(米国海軍=US NAVY)を攻撃できる能力を有していた為、これらを迎撃する戦闘機の開発が急務だったのです。
NAVY はダグラス社製で対空能力を強化し、艦載能力のある空対空戦闘機 F-6/D ミサイリアー をその対抗手段として当初計画しましたが、1960年に国防省(通称:ペンタゴン)の兵器共通化計画により開発は中止となってしまいました。
1961年には米空軍(=US AIR FORCE)で開発計画を進めていたジェネラルダイナミックス社製 F-111 に空対空&空対地能力を持たせ NAVY 用に軽量化&フェニックスミサイルを搭載した F-111/B 7機(開発機5機 量産型機2機)を試作しましたが、元々自重のある F-111 は艦船上の運用が不向きという事でその後、NAVY からの採用は打ち切られました。
ペンタゴンの兵器共通化計画と艦載能力を持ちあわせ F-111/B の性能&機動性より優れていた グラマン社製のモデルG-303が1969年正式に NAVY に採用され正式名称 F-14 として開発されることになりました。


映画 TOP-GUN(トム・クルーズ主演)でおなじみの F-14

●特徴
F-14 は、まず12機が開発用に作られ1970年に初飛行、1972年から量産型の F-14A がVF-124(訓練飛行隊)に初めて部隊配備され、1973年からは実戦部隊のVF-1(WOLF PACK) と VF-2(BOUTY HUNTERS)に配備されています。
以後、主力艦上戦闘機となり NAVY 用偵察哨戒機 RF-8G クルセイダーが老朽化のため退役してからは数機が偵察機器(TARPS)を搭載しその後任にもあたっています。
F-14 の特徴としては主翼の後退角が20度〜68度の間で変化させ飛行する事が出来る可変翼機構(VG可変翼)を持っている事。これは艦載時には最大75度まで後退させて小スペース化をはかると同時に、低高度から高高度までの高速移動性能と低速での短距離離陸能力を実現させる能力があります。当初、パイロットには操縦+可変翼の制御と、かなり複雑な操作が要求されていましたがその後、高度・気圧・速度・旋回状況に応じてコンピューターによる自動制御で主翼を後退させるシステムを導入しパイロットの負担を減らしています。
もう一つの特徴としては高性能レーダー(AN/AWG-9レーダーFSC)の採用と世界最長の射程を持つ長距離空対空 フェニックスミサイルを搭載している点で、長距離用ANレーダーでは最長213キロ先の目標を捕捉でき、追跡用AWGレーダーでは167キロ先の24個の目標を同時捕捉でき、更に96キロ先にいる任意の6目標に対してフェニックスミサイルによる同時攻撃が可能なことです。複雑な火気類の制御が要求されるため前席にはパイロット、後席にはRIOと呼ばれる管制官が乗り込む複座型のコクピットを持っています。1991年からは更にレーダーに改良が加えられ(F-14D)爆装攻撃(=地上攻撃)も可能となりました。


●運用
VG可変翼と大型のフェニックスミサイルを搭載した結果、軽いチタンを機体素材にしている割には自重18t 全備重量30t を越える艦載機としてはかなり大型で重量級の機体となってしました。しかしその大きな機体は見た目とは違い空中を軽やかに、まるで猫が曲芸をしている様な運動性能を発揮したため、米国人が親しみを持っているTOMと言う名前を付けあわせてTOMCATと呼ばれるようになりました。フェニックスミサイルは元々 NAVY 艦船を目標に対艦ミサイルを装備して飛んでくる爆撃機を長距離から攻撃するために開発されたものでミサイル自体にも大量の燃料タンクを持っておりかなり大きな姿をしています。これを搭載運用できるのは F-14 と F-111 位なものです。
また通常の空軍機と比べ2倍の降下率で着陸・着艦出来るようにランディングギアは頑丈なものになっています。これは着艦時に空母後方に張られたワイヤーに機体後尾から垂れ下がっているフックを引っ掛けて、短距離での着艦に十分耐えるためでもあります。


本物のTOP-GUNで使われている F-14A は迷彩色になっている

いくら空中での飛行性能が高いとは言え、F-14A が作られた段階で搭載されるエンジンの高出力化が検討されていました。重い機体を今のエンジンで活用するには少し非力だったのです。 F-14A ではプラット&ホイットニー製の TF30-P-412A型エンジン が455号機まで搭載されましたが、この型のエンジンは悪癖があり高起動時や低速時に突然ストールしたりするので F-14A での着艦は危険な賭けとも言われました。それ以降557号機まではその点を改良した TF30-P-414A型エンジン が搭載されました。1973年には F-15 F-16 用に搭載が予定されていた F100型 の派生型である F401-PW-400型エンジン のテストが F-14 原型7号機により行われましたが、エンジンの技術的な問題と機体の価格高騰によりこの計画は中止されました。


F-14B SUPER TOMCAT

その後 B-1爆撃機に搭載されるジェネラル・エレクトリック製エンジンの派生型で F101DFE型エンジン (TF30-P型の約1.3倍の推力)を搭載し F-14Aプラス と呼ばれる機体が1981年から飛行テストをしています。その後更にエンジンは改良され量産型用に進化し F110型エンジン と呼ばれるようになりました。このエンジンは F-14 F-15 F-16 に採用されることとなり F-14A 558号機以降はこのエンジンが搭載された量産型 F-14Aプラスが製造され、1986年には初飛行に成功しました。量産型 F-14Aプラスは後に F-14B SUPER TOMCATと改名され38機が新造されました。 また F-14A からエンジンを改装したものも32機確認されています。1996年からはこの F-14B に対地攻撃能力を加えた部隊MCAPも結成されはじめました。MCAP機はLANTIRNと呼ばれる夜間に目標を捕捉したり低空飛行を可能にする赤外線装置のことで、GPS(凡地球測位システム)機能も持っています。これにより夜間でも悪天候でも目標に到達できる全天候型となり、より多くの任務が可能となりました。


F-14D SUPER TOMCAT

1990年には F-14A 2機を改修し、B型よりさらに進化した F-14D が初飛行に成功しています。B型がエンジン改良であるのに対し、D型はエンジン改修に加え更にハイテク機器を装備しており最新の多目的戦闘機などにも負けない装備が施されています。 NAVY では当初この F-14D を400機以上を導入する予定でしたが予算の関係でペンタゴンはこれを認めず、D型は1992年に最後の37機目が新造され 1993年に最後の18機目が F-14A から改修されただけに留まりました。これにより全ての F-14 の生産は終了しましたが、その後も多少の小改造は行っていたようです。
このように改修を続けてきた F-14 も冷戦終結後には割高な機体維持費が予算的に問題となり、また爆装能力も高くてドッグファイト能力もより優れた新開発の次世代艦載機(FA-18 ホーネット)がどんどん部隊配備されてくると、その活躍の場を徐々に失ってきています。全ての機体がD型化すればまだまだ活躍できるのですが、今後は FA-18 に取って代わられていき2007年ほとんどの機体が旧式なA型のまま全機退役を迎える予定です。


20周年記念 特別機